全国の数学が苦手な子供から、こんな声が聞こえてきます・・・。
「なんで数学なんて勉強せなあかんの?」
「数学なんて将来、役に立つの?使うの?」
全国の学校の数学先生、塾などで数学を教えている先生はどう答えるのか、個人的にとても興味があります。 数学以外の教育の専門家はどう答えるかも興味があります。
確かに、「数学なんて将来、役に立つの?使うの?」という疑問の通り、多くの方にとって、将来役に立つのかというと、 中学・高校で習う数学が実際に使われることは少ないと思います。 例えば、SNSなどに友達が100人いるとして、その100人の友達のうち、数学を駆使して仕事をしてますという方は、どれくらいいるでしょう?
数学を教える仕事を抜きにすると、1人いるかいないかくらいでしょう。 もしかしたら、そんな人は聞いたことがないなという方もたくさんいるのではと思います。 数学を教える仕事をカウントしなかったのは、「実用」というものではないと考えたからです。 また、数学教師であれば、その周りに同業・関係者がいますので、自ずとカウントが増えると予想されるからです。
私も現在の本職はプログラマであり、プログラムに数学は全く必要ないかと問われれば、 必要であり、案件によって使うときもあると答えるでしょうが、 では、中学・高校で学ぶ数学そのものかと言われれば違うと答えます。
じゃあ、他の科目は将来、役に立つのか?
ちょっと、ここで数学教師の立場から、逆に疑問を投げかけてみたいです。
理科で習うアンモニアの化学式の知識は、社会人になって役に立つのだろうか?
リトマス試験紙が青から赤になったら酸性、赤から青になったらアルカリ性だという知識は、役に立つのだろうか?
社会で習う日本史の知識・・・たとえば、1221年(承久3年)の承久の乱のあと、京都に「六波羅探題」を置いて、 朝廷の監視、京都の内外の警備、西国の統轄に当たらせたという知識は、将来、役に立つのだろうか?
恥ずかしい話、私は20代の後半くらいの年齢のとき、アンモニアの化学式に含まれるH(水素)が3個だったか、 4個だったか忘れていたことがありました。大学を卒業して何年も経ちますが、友人との会話や仕事の話を通して、 アンモニアの化学式について語り合ったことは一度もありません。プログラム開発の仕事においても、 リトマス試験紙の色や六波羅探題の意義については必要になったことはありません。多くの方がそうだと思います。
同様に、社会人になって、1次関数と2次関数のグラフの交点の座標を求めることは、 ほとんどの方にとってないでしょう。このような疑問を投げかけると、学校で習う勉強の大半が、 特に必要ではないということになってしまうのではないでしょうか。
それでも学校で習う各教科には、それなりの深い意味があると思います。
「なぜ数学を学ぶのか?」の個人的意見
本題から外れるので、数学以外の教科については書きませんが、「なぜ数学を学ぶのか?」の個人的な意見を以下に書きます。 私なら、生徒に問われたらこう答えるというものを書きます。
中学・高校で数学を学ぶ主たる理由・目的は、将来使うためというよりかは、 普遍といえる事実を見極め、それらを応用し、問題解決ができる思考力を育むため。
もちろん、数学を仕事などで実践活用される方もいらっしゃると思いますが、 ここはひとまず置いて、多くの方にとっての数学学習の意義を考えてみました。
普遍的事実というのは、誰もが認める事実のことです。数学においては、公理・定理がそれに当たります。 平方根の計算や因数分解、2次方程式を解いたりすることは、将来の実用のためではなく、 先人が考え出した数学の基礎となる知識をベースに、論理的に考え、数学の問題を解くことを通して、 頭脳を鍛え上げるということではないかと思うのです。
「将来使うからだよ!!」と言ってしまうと、「じゃあ、どんな職業の人が、どんな場合に、どんな数学を?」 「それは多くの人にとって必要なの?」と問われるでしょう。 将来使うからという理由は、多くの方に説明する上で、苦しい理由になると思います。