数学教育の経験において、毎年のように聞くあるセリフがあります。 数学が苦手な生徒が授業中によく発するセリフです。
それは何かわかりますか?
意外と思われるかもしれませんが、私が注目するのは次のセリフです。
「あ~。この問題、“どうやる”んだっけ。“やり方”忘れた~!!」
「先生!先生!先生!ここ、“どうやれば”いいんですかぁ?」
何気ない普通の発言・質問のように聴こえるかもしれませんが、私は、このセリフには敏感に反応するようにしております。
別に怒ったり、厳しくとがめたりはしません。
ただ、この発言の中には、数学が苦手になってしまう要因が隠れていると考えるからです。 もちろん、高い水準でできる子も同様のことを言うかもしれませんが、おそらくニュアンスは違って聴こえます。
私の経験上、数学を苦手とする子から発せられることの方が圧倒的に多いのです。
では、何が隠れているかというと、おそらくこの発言をする子は、数学という科目は問題の解き方・・・「やり方」を覚える学問と捉えているのでしょう。
だから、「やり方を忘れた」なのです。
確かに、数学が得意な方は「問題の解法を覚えることが大切だろう!」と主張なさるかもしれませんが、それとは論点が違って、 苦手な子の思考形態として、本質となることはわからないまま、とりあえず問題に正解するための手順を無思考に丸暗記するということがあるのです。
問題を解く手順の丸暗記は、ワンパターンの問題は解けても、少し捻られると全く手も足も出なくなります。 中間テスト・期末テストのような範囲の限られたテストであれば、この思考形態でも通用することはあるかもしれませんが、 入学試験のような全範囲から様々な角度で問われる問題だとお手上げになります。
これがテストのタイプによって、点数が上がったり、下がったりして、不安定な理由のひとつです。
社会や理科のように、歴史資料や観察・実験のイメージが湧くものは記憶に残るものですが、 それ自体では意味をなさない数字やアルファベットの羅列の動かし方は、記憶には残りにくいものです。 また、面白くなく、大変苦痛です。
「数学なんて、つまらない」
そう思うのは、数学の捉え方の違いが大きいのだと思います。
発言を抑えつけない!禁じない
「そんな発言をしてはいけないんだよ!」と抑えつけることはしません。
何度も教え諭された生徒でも、つい言ってしまう言葉なのです。
むしろ指導者側としては、生徒の考え方を知る機会となりますので、 つい何気ない言葉を言ってもらった方が、間違いに気がつきやすいのです。
それよりも数学の勉強方法の捉え方を少しずつでいいので、正しい方向に導いてやることが大切だなと思います。 正しい方向に考え方が切り替われば、自ずとこのようなセリフは無くなりますし、成績は(数学だけに限らず全般が)アップすると思います。
生徒が発する何気ない言葉から、思考形態や深層心理を読み取るようにしております。 問題を生じさせている根本となるものを解決することが大切だからです。